秋深まり11月

あっという間に夏は過ぎた。9月の落語をメモしておかなくてはと思ってるうちに2カ月。はぁ~~。

9月で一番心に残ったのは、病から復帰した柳家小三治さんが神戸の東西落語名人選で高座にかけた「粗忽長屋」。これまでどんなに上手い噺家さんが演じても、シュールで現実離れしてて、どこか醒めてしか聴けなかった話が、素直に話しの中に入りこめ登場人物の気持ちになれた。おバカな登場人物が愛おしかった。何が違うんだろ…。絶品でした。

鈴本演芸場は上席。桃月庵白酒さん「茗荷宿」が適度のくすぐり、メリハリ、運びで気持ちいい。トリの三遊亭白鳥さん新作「落語の仮面」シリーズは、残念ながらついていけない。面白さは伝わるけれど、土台の「ガラスの仮面」をよく知らないので、途中何度も置いてゆかれた。同じく新作の春風亭百栄さんの「露出さん」はブラックだけれどペーソスがあって現代版人情物とも思えた。

朝日名人会では柳家権太楼さん「藪入り」。きっちりと丁寧。この人の得意な茶目っ気やくすぐりは封じ、人情話を王道で語った。お涙モノにしないところがさすが、だけど、こういう噺もしはるんやと重鎮の力を感じた。柳家喬太郎さん「擬宝珠」は枕でずいぶん笑わせ、本体は軽めに。その場その場の打てば響く展開は上方の桂文珍さんと同様、頭の回転の良さと自身楽しむ姿勢から来ているように思う。

落語研究会は、何と言っても柳家三三さん「五貫裁き」。枕軽めに一気に話に引き込む。数年前まで感じた硬さや力で押す風ではなく、語りで引き込む。どんな話もこなせる自信と余裕かな。二つ目有望株とされる柳亭小痴楽さんは研究会はたぶん2回目。「干物箱」。肩の力は抜けてきたようだけど、早口は相変わらずでした。古今亭志ん陽さんとこの人は応援してるんだけど。橘家文蔵さん「試し酒」。癖のある人っぽくて苦手だったけど、風格がでてきたよう。お酒を飲み干す所作のタメがずいぶん長いのが見せ場づくりかなと、気になった。

やはり一気書きは辛いな。10月落語はまた。

お彼岸

台風一過の秋晴れの日、早めの方が人が少なくていいかと、お墓参りに行った。墓地の最寄駅はいつも観光客でごったがえす賑やかさだけれど、10分ほど歩いたところにある墓地は別世界。緑を背に市街地が見下ろせる高台は予想通り静か。出会ったのは姉妹らしい若い女性2人と、花の入ったコンビニ袋を提げたおじいさんだけだった。

駅に戻る途中に「早朝、イノシシとサルが目撃されたので注意を」と張り紙がある。百日紅の花とザクロの実がきれい。古い門構えの農家?の軒先には「ブドウあります」のビラ。ピオーネを一房買ったら甘くて新鮮だった。

読書会

20年近く前からいくつかの読書会に関わり、現在も2つの会で友人たちと本を読む楽しさを分かち合っている。月一で開くのは4~5人がランチを兼ねて半日ウダウダ喋る気楽なもの。

8月は「狂うひと」(梯久美子著)が課題書だった。副題に<「死の棘」の妻・島尾ミホ>とあるように、作家・島尾敏雄の妻ミホの評伝なのだけれど、同時に敏雄の代表作「死の棘」の新たな読み解きになっている。

読売文学賞受賞(評伝・伝記)は納得の作品で、緻密で粘り強い梯さんの取材力がこれまで書かれなかった島尾夫妻の姿を浮かび上がらせている。戦争という極限状況での男女、奄美大島の歴史と精神性、作家同士のカップル…切り口は多様。メンバーの感想もさまざまに別れ、作品自体の幅を感じた。私が一番強く感じたのは、かつて著名な評論家たちがこぞって「死の棘」を称賛したが、評価は一面的だったということ。目からウロコ、でした。梯さん、ありがとうございます。

地蔵盆

今日は子どもの守護神ともいわれる地蔵尊を祀って近所の子どもたちが集う「地蔵盆」行事があった。庶民信仰というよりは、夏休み終わりのお楽しみ会的色合いが強い。年々、続けられなくなる地区が増えるなか、私の暮らす町内は長老方の尽力もあって、頑張って続けている。

正直、2カ月前から始まる準備は大変だけれど、幼児から中学生までが入り混じって楽しげに遊んでいる光景がご褒美。穏やかな幸せ感に浸らせてもらった。

昨日までの蒸し暑さがウソのように朝から気持ちのいい風が吹き抜け、日暮れはオレンジ色の優しい夕焼け。オマケに三日月も姿を見せた。

大須演芸場

お盆明けに初めて名古屋の大須演芸場に出かけた。古今亭志ん朝さんが応援していた演芸場を一度見たかったから。

当日は柳家三三さんの独演会で、長編人情噺「嶋鵆沖白浪(しまちどりおきつしらなみ)」6回続きのうちの4回目。「三宅島の再会」「闇の島脱け」の二席だった。

この人、こんなに上手かったんだ。 特に島脱けの場面。うねる波、叩きつける雨、嵐に翻弄される小舟の揺れから一転、無音の闇に響く亡者の声。映像よりもはるかにリアルで、鳥肌ものだった。落語という芸能はまだまだ懐が深そう。

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